本日の一杯
- 科学的な側面から見たコーヒーとは何か知りたい!
- 初歩的なコーヒーの知識を学んだ人!
- これからコーヒーを学びたい人!
こんな人に向けた記事となっております!
この本には,他ではあまり書かれていないようなこともたくさん書いてありためになりました。
面白かったところや「なるほど!」と思ったところを書いていきます!
結構長くなってしまったので,上にある目次から気になるところに飛んでお読みください!
ご挨拶
こんにちは キウイです!
旦部幸博さんの著書『コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか』を記録の意味も込めて,解説していきます!
第1章 コーヒーってなんだろう?
コーヒー豆は豆じゃない
コーヒー豆はコーヒーの果実の中にあるので豆ではない。
という情報はよく見るのですが,じゃあなんなの?というところはなかなか書いてありませんでした。
コーヒー豆に当たる部分は内乳(胚乳)と言うようで,文中では梅干しの天神様と表現されています。
天神様とは梅干しの種を割ってみると中から出てくるものです。
青梅でなければ食べることも可能なので,気になった方はぜひやってみてください!
梅干しと同じようにコーヒー豆も殻に囲われていて,これを”パーチメント”と言います
また,内乳について調べると,イチョウのギンナンも内乳のようです。
幻のコーヒー コピルアクについて
ジャコウネコのウ〇チから取り出したコーヒー豆をコピルアクと言います。
上でも説明したパーチメントに入った状態でジャコウネコの体内を通過し,さらに高温で焙煎することから「一応」,衛生的には問題ないようです笑
猿の糞からはモンキーコーヒー,鳥のジャクーからはジャクーコーヒー ゾウからはブラックアイボリーというコピルアクと似たようなものがあるそうです。
これは知らなかったのでためになりましたし,ブラックアイボリーがやたらカッコよくて笑いました。
その動物特有の消化酵素や一緒に食べたものによって,他にはない風味になるようなので一度くらいは飲んでみたいものですね!
第2章 コーヒーノキとコーヒー豆
コーヒーの起源
世界中のコーヒーのほとんどはアラビカ種かカネフォーラ種のどちらかです。
(カネフォーラ種は「頑強な」,「粗野な」を意味するアラビカ種と良く呼ばれます。)
そしてアラビカ種の起源はカネフォーラ種とユーゲニオイデス種の自然交配によって生まれたと考えられているようです。
アラビカ種はカネフォーラ種よりも風味が良いので,その起源であるユーゲニオイデス種はもっとすごいポテンシャルを秘めているのでは!?と思ってしまいますね!
ユーゲニオイデス種は超レアものとして取り扱われることもあるので,お金と機会があれば飲んでみたいです!
コーヒーの交配について
コーヒー好きの中ではコーヒー=アラビカ種というイメージですよね。
でも,アラビカ種は他の品種の2倍の染色体をもつ,異質な品種なんです!
DNA解析の結果,カネフォーラ種が父方で,ユーゲニオイデス種が母方なのではないかと言われているようです。
2倍の染色体をもつことで,1本のコーヒーノキからどんどん増やして行けるので,世界中にコーヒーが広まったのは,アラビカ種が異質なおかげかもしれません!
第3章 コーヒーの歴史
コーヒーの二大品種
コーヒーノキの輸出が禁止されていたイエメンから,17~18世紀の間に2つのルートでコーヒーの苗が持ち出されました。
1つ目はオランダ東インド会社が盗み出した,イエメン→インド→インドネシア→オランダ…のルート。こちらがティピカ種になります。
2つ目はイエメンのフランス使節団の活躍によって正当に持ち出されたものです。こちらはブルボン種と呼ばれています。
盗み出したものと譲渡されたものという真逆のルートで広がったコーヒーですが,そのおかげで今でも様々な品種の様々な風味のコーヒーが飲めるのはありがたいですね!
リプトンとコーヒー
紅茶で有名なリプトンですが,実はコーヒーと大きな関わりがあるんです。
世界中の様々な場所でコーヒーの生産が広がっている中で,スリランカでもコーヒーの栽培が開始されました。
その矢先にコーヒーの天敵であるさび病が蔓延しました。
当時対抗する手段がなかったため,スリランカのコーヒー農園は荒れ果ててしまいます。
そんな土地に目を付けたのがトーマス・リプトン卿でした。
そこから紅茶の栽培が始まり,今では有名な紅茶の産地となっているわけです。
当時は「セイロン国」という国名であったことから,今でもスリランカで生産された紅茶はセイロンティーと呼ばれています。
抽出の歴史
ざっくりいうと煮出し式→浸漬式→透過式の順番で発明されてきました。
煮出し式とは小鍋に水とコーヒーの粉を入れて,ぐつぐつ煮立たせることで味を取り出す方法です。
ほぼ全ての成分が取り出されることと,煮出すときに味が劣化するため,苦みや渋みも強くなります。
浸漬式とはフレンチプレスなどのように,コーヒーをお湯に漬け込んで抽出する方法です。
こちらは煮出し式よりも温度が低いため,雑味が出にくいです。
さらにおいしい抽出方法は無いか。ということで考案されたのが透過式です。
ハンドドリップやネルドリップも透過式に当たります。
透過する間に成分が分離されて,コーヒーの美味しい成分が濃縮されます!
美食家のブリア・サヴァランや文豪のバルザックも透過式を最良の抽出方法としていたようです!
さらに,19世紀後半にはエスプレッソマシンが発明され,イタリアを代表する飲み物になりました。
フレンチプレスやサイフォンなど,今でも使われている器具の多くは19世紀に考案されたもののようです。
第二次世界大戦後の日本は独特な喫茶店文化が広まりました。
ネルドリップやサイフォンなどは他国では廃れてしまっていたのですが,当時のコーヒー好きの「無くしてはならない」という強い意志によって現在まで残ったようです。
美味しいコーヒーを飲めるのは彼らの努力のおかげだと思うと,いつの時代でも美味しいものを求める文化は変わらないのだと親近感がわきますね。
ちなみに僕はネルドリップで淹れたコーヒーが一番好きです!
第4章 コーヒーの「おいしさ」
コーヒーの苦み
味覚の中で甘味,塩味,うまみはポジティブなものであるのに対して,苦み,酸味はネガティブなものです。
しかし,コーヒーの苦みが好きという人も多いですよね。これはなぜでしょうか。
この解答をかみ砕いて言うと,苦みに慣れたからです。
つまり生物的には避けるべき苦みを口にして,「これは安全なんだ」と体が覚えることで徐々に苦みが好きになっていくということのようです。
またネガティブな苦みが消えることで,爽快感を感じているという見方もできます。
しかし慣れだけではなく,先天的に苦みを感じにくい人もいるようで,そういう人はブラックコーヒーやエスプレッソ,ブロッコリーを好む傾向があるようです。
また,苦み成分にはさまざまな種類があるので,あの食材の苦みは感じにくいけど,この食材の苦みは感じやすい。といったことも起こるようです。
他にはゴーヤやビールの苦みに反応する部分も見つかっているようです。
生命化学系にも興味があるので,この分野にはすごく興味をそそられました笑
コーヒーの香り
おいしさには味だけではなく香りも重要であることはみなさんご存じのはず。
苦手な食べ物を食べる時に鼻をつまんで食べるのもこれを表しています。
実は嗅覚と言っても,鼻から吸った時の香りと,口の中から広がる香りでは感じ方が違います。
犬は鼻が良いとよく言われますが,実は口から広がる香りは人間の方が優れているそうです!
これは知らなかったので驚きました。人間はグルメな生物と言えるかもしれません!笑
第5章 おいしさを生み出すコーヒーの成分
苦みと酸味
コーヒーの成分といえばカフェインです。しかしコーヒーには,カフェイン以外の苦み成分も含まれていて,カフェインの影響は全体の1~3割ほどのようです。
これはカフェインレスコーヒーが苦いことからもわかりますね!
そしてカフェイン以外の苦み成分のほとんどが焙煎によって作られます。
同じ豆を焙煎してもやさしい苦みになったりとげとげした苦みになるのは,焙煎の仕方によって苦み成分の種類や量が変わるからだと言えそうですね!
一方酸味成分については焙煎前からあるものと焙煎によってできるものの両方があります。
焙煎前からある酸味成分は,フルーツに含まれるものと同じクエン酸やリンゴ酸のようです。
浅煎りのコーヒーがフルーツのように感じられるのはこのおかげですね!
このフルーツの酸味というのは焙煎が進むにつれて揮発して少なくなっていくようです。
コーヒーの香り
コーヒーの香り成分は1000種類ほど見つかっていて,その中で一杯のコーヒーに含まれているのは300種類ほどだそうです。
これは生豆にしか含まれない成分や,浅煎り深煎りそれぞれにしか含まれない成分があるからです。
中でも最もコーヒーらしい香りの成分をFFTというのですが,コーヒー以外の食べ物ではあまりない成分のようです。
FFTは焙煎によってできるのですが,その材料がコーヒーにはたくさん含まれています。
FFTの材料は実は害虫から身を守る成分でコーヒーペプチドというタンパク質のようです。
カフェインと言いコーヒーペプチドと言いコーヒーノキを守る成分が,私たち人間にとってはコーヒーらしさになっているというのは何とも都合の良い話ですよね笑
コーヒーはカフェインが含まれていることから「これ飲んだら気分上がるぞ!」てことで飲まれ始めて,さらに炒めてみると「めっちゃいい香りするじゃん!」というような流れで今の姿になっています。
コーヒー以外でコーヒーペプチドを持っている植物が見つかって,コーヒーとはまた別の嗜好品として楽しめるようになったら面白いですね!
癖のある香り
上記以外にもケトン類やアルデヒド類の香り成分がコーヒーには含まれています。
これらによってチョコレート感やフルーツ感が与えられます。
しかしこれだけを集めて嗅いでみると汗臭さや脂ぎったような印象を受けるようです。
これを筆者は「生々しさ」と表現していて,めちゃめちゃ腑に落ちました。
つまり生々しい香りが少し入ることで,コーヒーがうっとりするような香りになるわけですね。
コーヒーと発酵
コーヒーは発酵食品です。といっても実感がわかないかもしれません。
コーヒーには納豆のように,微生物そのものが含まれているわけではありません。
しかしコーヒー豆になる過程(精製)では微生物の力を借りています。
詳しい話は精製について調べると出てくるので割愛します。
そして,モカのワインのような芳醇な香り(モカ香)は発酵によるものではないかと言われています。
また,ナチュラル精製でもゆっくり乾燥させた方がモカ香は強くなるようです。
同じくナチュラル精製のブラジルでモカ香がしないのは,乾燥が早いからのようです。
最近では,アナエロビックファーメンテ―ション(長い)という発酵に着目した精製方法も登場してきています。
ヨーグルトを乳酸菌で選ぶように,コーヒーを産地や品種だけでなく微生物で選ぶ時代が来るかもしれません!
第6章 焙煎の科学
焙煎について
筆者は焙煎と言ってもピンとこない人が多いので,自分でやってみることを提案しています。
これには僕も同意見です。
実体験なのですが,実際に手を動かしてみると焙煎に対するイメージやコーヒーの理解が深まります。
無料のnoteで片手鍋焙煎について解説しているので,よかったらご覧ください!
僕はコーヒーの風味にたいして,産地や品種よりも焙煎度の影響が一番大きいと思っています。
好みの焙煎度を見つけることは,好みのコーヒーを見つける近道なのでぜひチャレンジしてみてください!
軟化するのコーヒー豆
コーヒーの生豆はめちゃくちゃ硬いです。焙煎された豆も割れますが硬いです。
それなら焙煎中のコーヒー豆も硬いはず。そう思っていました。
しかし,焙煎途中のコーヒー豆は柔らかいです。これは衝撃的でしたね笑
コーヒー豆の内部は加熱されると,溶かしたガラス,つまり水あめのようなどろどろの状態なります。
この時ペンチ等で潰すとグニャッと平べったくなります。
更に焙煎を進めると水分が飛んで,今度は固くなって行きます。
焙煎っておもしろい。
システム珈琲学
前述の喫茶店時代に発達したのは抽出技術だけではありませんでした。
当時の焙煎技術の象徴としてよく登場するのは「珈琲屋 バッハ」田口氏によるシステム珈琲学です。
システム珈琲学は様々な産地や品種の豆を,その見た目で4種類に分類するという斬新なものでした。
エチオピアは浅煎り,マンデリンは深煎りというように,産地で焙煎度を決めることに異議を唱えたわけです。
つまり成分という化学的なものではなく,大きさや厚みという物理的な特性に着目したわけですね。
喫茶店時代には,生豆の成分にそこまで違いがなく,物理的特性による火の通りやすさで風味が決まっていたようです。
システム珈琲学についてはこちらの本で詳しく書かれています!
そんなシステム珈琲学に転機が訪れます。スペシャルティコーヒーという概念の登場です。
ゲイシャ種に代表される個性的な品種が出てきたことによって,生豆の成分にも違いが出てきました。
システム珈琲学は生豆の成分にはほとんど違いがないという前提で成り立っていたので,さらに発展させる必要がありました。
スペシャルティコーヒー登場後のシステム珈琲学については複雑になってくるのでここでは割愛いたします。
『田口護のスペシャルティコーヒー大全』に詳細が書かれているので,気になる方はぜひ読んでみてください!
第7章 コーヒーの抽出
抽出とクロマトグラフィー
クロマトグラフィーは小学生がよくやる,黒いインクを紙につけて下から水を吸い上げて分離する実験を思い浮かべてもらうとわかりやすいです。
つまり,水に溶けやすい物ほどたくさん取り出せるという訳ですね。
この分離する性能は,コーヒーの粉が何段に積み重なっているかによって決まります。
たくさん層があるほど優秀になります。
コーヒー淹れる時は1杯よりも2杯分の方がおいしいと言うのは,これが原因かもしれませんね!
この層はコーヒーの粉が細かければ細かいほど多く,優秀になります。
これを実現しているのが,そうエスプレッソです。
層がたくさんあることで狙った成分だけを取り出せるため,濃縮された濃厚なエスプレッソになるという訳です。
もともとは,細かく挽いたコーヒーをできるだけ早く抽出するためにエスプレッソマシンが生まれました。
しかしそれ以外にも,圧力によって炭酸がコーヒーに溶けてクレマができたり,濃縮された美味しいエスプレッソができるなど様々な利点がありました。
今では一般的なエスプレッソですが,その裏には様々な工夫と偶然があったというのは面白いですね!
ダッチコーヒーと水出しコーヒー
ダッチコーヒーとは上の画像のような水をポタポタと落として,時間をかけて抽出したコーヒーです。
昔ながらの喫茶店に行くとたまーに置いてあることがあります!
水出しコーヒーは冷たい水にコーヒーの粉を一晩くらい漬け込んだコーヒーです。
最近だとコールドブリューコーヒーなんて呼ばれ方もします!
この2つのコーヒーの特徴は常温や冷たい水で抽出していることです。
普通のドリップコーヒーは熱いお湯を使って短時間で抽出しています。
そうすると湯気と一緒に香りの成分が飛んで行ってしまいます。
これに対して,冷たい水を使ったコーヒーは香り成分が飛んでいません。
香り成分が飛んでいないので鼻で感じる香りは弱いのですが,口に含んで体温で温められると香りが花開くような体験が得られます。
ダッチコーヒーを自宅で作るのは大変なのですが,水出しコーヒーは自宅でも簡単に作れるので是非お試しください!
第8章 コーヒーと健康
情報の選びかた
まずは医学博士の筆者が信頼できる情報の選び方について教えてくれています。
まずは,コーヒーに含まれる○○という成分が体に良い,悪いというもの。
コーヒーに含まれるんだから間違ってないでしょ,と思いがちですが様々な成分が含まれている中で一部だけを取り出して考えるのは危険です。
Aという成分に効果があってもコーヒーという飲み物になったときに本当に効果があるかわからない。ということです。
これは他の成分の影響や抽出方法によって成分が変わるなど様々な理由があります。
ほかにも,コーヒーを飲むことは××という病気に対して効果的である。というものは確かにその病気には効果があっても,他の病気のリスクが上がる可能性があるということをちゃんと理解する必要があります。
じゃあ研究の意味がないじゃないか,と思ってしまいますが,様々な要因を含めたものとして死亡リスクという考え方があります。
死亡リスクには,病気や事故などの情報が含まれているため,健康を考える時の指標として使えるのではないかとわれています。
まとめると,ものごとの一部分だけを見て判断するのは危険である。ということです。
次に重要になってくるのが因果関係についてです。
簡単に言うと,コーヒーを飲むと健康になると思っていたら,もともと健康な人にコーヒーを飲む人が多かったみたいな感じです。
この場合,コーヒー→健康ではなく健康→コーヒーの順番なので,いくらコーヒーを飲んだところで健康にはならない可能性があるわけです。これはあくまで例です。
最後に重要なのは,コーヒーという飲み物には悪い部分と良い部分のどちらも含まれているということです。
これは例ですが,コーヒーを飲むと集中力が上がる一方で疲れやすくなる。のように良い面と悪い面のどちらも見て,最終的に自分にとって良いのか悪いのかを判断する必要があります。
その結果自分にとっては良いものだけど,友達にとっては悪いものとなったとしても,言い争う必要はなくて,ただ合うか合わないかだけの話だと忘れないようにしなければいけません。
まとめ
コーヒーを学び初めてからもう3年が経っているのですが,この本には知らなかったことがたくさん書いてありました。
書きたいところがたくさんあり過ぎて,思っていた分量を大幅に超えてしまいましたが,楽しんでもらえたら幸いです!
特にコーヒーの成分や抽出についての話は,大学の実験でも活かせそうだったのでとても有意義でした。
この本は「コーヒーとは何か」という問いに対して科学的な側面からとらえています。
コーヒーを深く知りたい!根拠のある情報が欲しい!という方におすすめです!
もっとくわしい話も書かれているので,気になった方は是非読んでみてください!
最後までお読みいただきありがとうございました!
今回は↓の本について書きました!
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